求人募集の柔軟性
父は「ああ、いかん」と言いながら、人たちを呼び止めます。
「ちょっと待ちなさい。
駐在所の中に入りなさい」と言いますと、女の人たちはその場にへたへたと座り込んでしまいます。
駐在所の中に入れても皆放心状態です。
駐在さんに呼び止められるということは、せっかく苦労して手に入れた買い出し品が没収されることを意味していますから、その瞬間に動けなくなるのももっともなことです。
ところが、驚いたことに父は、「駐在所の前を堂々と通り過ぎていったら、ここでは大丈夫でも次の駐在は厳しいから全部没収されるぞ。
重くて疲れるかもしれないが、抜け道の地図を書くからそちらを遠回りしなさい」と言って地図を渡してやりました。
皆涙で顔がぐしゃぐしゃになりながら、手を合わせて帰って行きました。
小学校6年生の時ですが、感激したものです。
そんなことでしたから、父は万年平巡査のままでしたが、本当に心の優しい人でした。
食糧難や物価の高騰があり、まだまだ戦後の混乱は続いていましたが、それでも復興に向けて歩み始めた時期です。
幸い私のところは戦災を免れましたが、材木すらない中で日本中で建物が建ち並び、兵隊さんたちが復員してきて、徐々に産業が立ち直っていこうとしていました。
この時期は、ベビーブームの幕開けでもあります。
終戦後の昭和22年から数年間に生まれた子供は、他の年の出生数に比べて多く、日本の年齢別人口構成上、特異な存在です。
この子供たちが小さいころは「ベビーブーム」で、大きくなるにつれ、小学校に仮設教室が建ち並んだり、成人してからは結婚ラフンユがあり、さらにその子供たちが第二次ベビーブームを引き起こしました。
第一次ベビーブームに生まれた人たちは、いまでは50歳になっています。
いまの時代にあっては、一番リストラにおののく世代かもしれません。
さらにその子どもたち、第二次ベビーブームの人たちは大学を迎える時期ではないでしょうか。
この原稿を書いている時点では、高校、大学とも新規卒業者の記録的な就職難が伝えられています。
父親は会社を辞めなければならず、子どもは就職難で職が決まらないといった大変な時代を迎えています。
各家庭もこの不況の波をもろに被っています。
いま、日本をあげてこの不況を乗り切ろうと必死になっています。
「政治が悪い、政府が何もやってくれないから・・」と皆一斉に悲鳴を上げています。
家では母親が「うちの人はこんなに厳しいリストラの時代にあって、何の危機意識もないのだから」といった声が聞こえてきそうです。
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